北天神は文化芸術の発信地だった《沖 賢一さんインタビュー》
リノベスタート寸前のMaruhachi。
この日は、北天神の須崎公園でピクニックイベントなどを企画している画家の沖賢一さんに現場を見に来てもらって、話を伺った。ライター・カメラマンの山下が、「Maruhachiには沖さんが入居するイメージしか湧かないのです!」と鼻息荒く申し出ると、快くOKしていただいた。
さっそくSTANDARD MANUALさんに集合して、徒歩5分で到着。
(以下、沖さん=「沖」山下=「山」)
山:じゃん、ここです!
沖:え!めっちゃいい!しかもボートレース場の横っていうちょっとディープでアングラな感じ…。いいですねーー。
山:もともとは質屋だったんです。それで、路面のシャッターから入ると立ち飲み屋になってて、ボートレースが開催される時だけ開いてた。質屋入口の奥は金庫になっている部屋があるし、階段がいっぱいあって、あっちこっちから出入りできます。面白いですよね。
(手垢のついた質屋の暖簾にじんわり感動)
山:ここは3階です。日当たり良くて明るいですよね。
沖:いいですね!そしてまさかこれテラスに出れるとか?うわっ!めっちゃいい!ここ自由に使えるとか最高ですね。
(屋上にときめく沖さん)
山:Maruhachiの物件見てみて、いかがですか?
沖:借りた部屋をDIYできるってのが最高ですね。日当たりもいいし、何より立地が好みすぎます。
僕が借りるとしたらアトリエとしてですが、絵以外にも自分の好きな物もたくさん置いたり、自分が好きな空間を作り込んでみたいです。訪れる人が一目で僕の好みがわかるような。その空間を見て共感して下さる方がいれば、その方とは面白いことが始まるんじゃないかと期待してしまいますね。
山:自分を表現する空間という感じですね。そういう部屋がたくさん集まると本当に秘密基地みたいになりそうですね!いろんな個性を持った人が集まる場になりそうな気がします。
沖:交通の便は悪いけど自転車あれば問題ないし、駐輪場あれば打ち合わせに来てもらうのもお願いしやすいですね。
山:沖さんが活動しているアーティストレーベル「ヘンリー&マシュー」さんのメンバー数人で借りて共有アトリエとして使うのも良さそうですね。ちなみに1Fは、レンタルスペースで入居者の方は安く借りれるのですが、沖さんならどんなことしてみたいですか?
沖:僕だったら、毎週決まった曜日にお店をしてみたいです。グッズ作ってそこで売ったり、ビールやおつまみも買えて。昼からやってる飲み屋兼グッズの直売所みたいな。ただ自分が飲みたいだけです。
山:それいいですね~!他にどんな入居者の方がいたら面白そうですか?
沖:デザイナーとかカメラマンの方が居たら、お互いできることを活かし合って仕事できそうですよね。僕が居たとしたら僕は頼るばっかりになりそうですが(笑) もし、Maruhachi全体で一つの仕事を受けたりするようなことがあったら面白いですよね。
改装前のイメージで考えると、私立探偵とか入居してて欲しいけど(笑)
(あれもこれも、と想像する沖さん)
山:沖さんは、北天神にどんなイメージがありますか?
沖:北天神は、前から好きです。というより須崎公園が好きで、休日は須崎公園でピクニックしてスタンダードマニュアルを覗いて帰ることも多かったです。
しかも元々この辺は、文化芸術や音楽の発信地だったんですよ。その当時を生きたわけじゃないから詳しくは知らないですけど、僕の母親が若い頃には、野外音楽堂で海援隊やチューリップがライブをしていたらしいですよ。あとは、ザ・モッズとかいわゆる「めんたいロック」と呼ばれたバンドのライブもあっていたと聞いたことがあります。
須崎公園内では野外彫刻展なども開催されていたとか…。記憶が曖昧ですが。
これからMaruhachiを含めて、北天神に色濃いクリエイティブな人達が集まって、北天神から昔みたいに文化芸術を発信することになれば、面白いなと思います。そんなエリアが福岡にあるのも嬉しいですよね。ニューヨークには元々は廃墟ビルだったのかなと思わせる大きな建物内に、アーティストのスタジオやギャラリーがぎっしり入ってて、そんな建物が何件もあるんですが、規模は違ってもそんな建物や場所になったらいいですね。
Maruhachiの立地や空気感が好きな人が発信する物事が楽しみです。すぐに埋まりそうですね。
(野外音楽堂ステージ背面の壁は、2017年のNORTH TENJIN PICNICSでヘンリ&マシューのメンバーと沖さんが描いたもの)
終始、「めっちゃいいねー」「入りたいなー」と面白がってくれた沖さん。
私たちが想像しているMaruhachiと、沖さんが想像したMaruhachiとが組み合わさって、さらにイメージが膨らんできた。
もしかすると、Maruhachiオープニングイベントで沖さんにライブペイントや作品展をしてもらえるかも!こちらも楽しみ。
(4/28〜5/6 オープニングイベント決定)
須崎公園の野外音楽堂で沖さんにお話を伺っていると、一匹の野良猫が、オレンジ色の個性に魅かれてまっすぐに歩いて来た。こんな思いがけない出来事も、北天神の余白の良さかも。
これから施工も進んで、どんどん形になっていくMaruhachiに熱い視線を注がずにいられない、と改めて感じた日だった。(山下舞)
沖 賢一 oki kenichi
画家。福岡を拠点に国内外で活動。平面だけに留まらず、インスタレーション作品の発表やcaph troupeやCIAOPANICなどのアパレルブランドとのコラボ商品のデザインを手掛ける。
2012年。明るさが足りないと感じる空間でアート活動をすることを目的としたアーティストレーベルHenry&Mathewを設立。2014年。ニューヨークへ渡り、Bushwick Open Studios 2014の参加アーティストに選出される。自身の絵に合う文字を探す作業を繰り返し、独自のフォントを完成させる。同年、STANDARD MANUALと共に須崎公園でのピクニックイベント「NORTH TENJIN PICNICS」を共催。現在まで続いている。
2016年以降、これまでの人をモチーフとした作品に加え、文字での活動も多数行う。
画材 : クレヨン・色鉛筆など
巡回展「Whac-A-Mole」二階-nikai-